不可視光線帯の紫外線を観測するには専用測定器が必要不可欠
「この窓ガラスはUV-B(紫外線B波)はカットしてるけど、UV-A(A波)はほとんど素通しだな」
「この保護メガネ、紫外線カット99%って書いてあるのに、長波長側の紫外線はまったく防げてないよ」
日常生活ではさまざまな紫外線対策アイテムを使っていますが、その効果がどこまで信頼できるのかは不明でした。安価なチェックアイテムで試しても、ざっくりとしか検証できず、結局はメーカーの公称値に頼るしかなかったのです。
しかし、単なる紫外線強度計ではなく、不可視光であるUV帯のスペクトル分布を測定できる分光器を思い切って購入したことで、それまで隠れていた“真実”が一気に見えるようになりました。
UV帯を測定できる分光器は非常に高価で、生活必需品でもない研究者向けの機材を個人で買うのはかなり勇気が要ります。
それでも、今まで代用品を工夫して紫外線観察をしてきた中で感じていた 測定精度の低さ・限界への不満 が、この分光器の導入で一気に解消されました。
「目に見えない領域が、道具を通して“見える”ようになる」――その瞬間の満足感と感動は、筆舌に尽くしがたいものがあります。
そんなわけで、今回は分光器 HPCS330UV を紹介します。
個人で趣味の自由研究のために大金を投じる人はほとんどいないと思いますが、もし私と同じように知的好奇心を満たす浪漫のために、生活の困窮を顧みず散財する同好の士がいれば、参考になるかもしれません。
光学測定器メーカー HOPOOCOLOR の分光器
HPCS330UVは中国製
HOPOOCOLOR(ホプーカラー)は中国・浙江省にある企業で、光学試験装置の開発、⽣産、販売、技術サービスを専門とする会社です。研究者や産業用途向けとして、コストパフォーマンスの高い分光器「HPCSシリーズ」を展開しています。
その中でも HPCS330UV は、紫外線帯の測定に特化したモデルです。
販売価格は Amazon でおよそ 150,000 円前後。
紫外線帯を測定できる分光器としては比較的リーズナブルな価格ですが、個人が趣味で買うとなるとやはり躊躇する金額でしょう。
HPCS330UVはスマホやPCと連携可能
HPCS330UV は液晶モニター付きで、本体だけでも測定器として稼働します。観測データは本体メモリーに保存できます。
受光部(プローブ)と本体は分離でき、受光部だけを光源に置いて本体を手元で操作することも可能。受光部には 高精度CCD内蔵 Φ17mmコサインコレクター が搭載されています。
また、本体・受光部それぞれにリチウムイオン電池が内蔵。
説明書(PDF)は本体メモリー内に収録されています。
また、説明書にはPC用の専用ソフト(Windows版)も本体メモリー内に収録とありましたが、実際には同梱されておらず、メーカーに連絡して請求、メールで送ってもらう必要がありました。
他のHPCSシリーズの購入者レビューにも同様の報告があるので、どうやらこの収録詐欺はディフォルト設定らしく、この点は注意が必要です。
さらに、WeChat(中国で広く使われているメッセージアプリ)を立ち上げて説明書に記載されたQRコードを読み取れば、スマートフォン用の専用アプリを入手できるとも記載されています。(私はパソコンにしか接続していないため、スマートフォン用アプリは試していません)
パソコンにHPCS330UVを接続して周辺機器として認識させると、専用ソフト経由で操作可能になります。
- スマートフォン:専用アプリを入れれば、Bluetoothで受光部と接続可能。スマホが本体代わりになります。
- パソコン:専用ソフトをインストール後、USB Type-Cケーブルで有線接続。Bluetooth接続は不可でした。
HPCS330UVの詳細スペック
対応波長範囲:230~450 nm
(UV-C短波長側は測定外ですが、230 nm以上あれば実用上ほとんど困りません)
測定対象:紫外線C波からHEV(ブルーライト)帯までカバー
商品は、スマートフォンのような化粧箱に入っていました。さらに外側を梱包材で包み、HOPOOCOLORのロゴ入り段ボールに収められた状態で、丁寧に送られてきました。
開封すると、以下の付属品が同梱されていました。
- 5V/1A 電源アダプター
- USBケーブル
- 収納袋
- USBアダプタモジュール(受光部を単体で使う際に装着)
- 保証書・適合証明書
- 液晶画面用のクリーニングクロス
液晶画面用のクリーニングクロスは、いわゆるメガネ拭きです。タッチパネル式液晶に指紋が付いたときにこれで拭きなさい、という、ちょっと気の利いた“粋なはからい”でしょうか。
本体をパソコンに接続するときは、「Uディスクモード(USBメモリとして認識)」と「通信モード(測定用)」を手動で切り替える必要があり、少し面倒です。
波長測定自体は簡単で、光源に受光部を向けて▶ボタンを押すだけ。操作性は非常にシンプルです。
最後に
HPCS330UVは、高価ではありますが、個人の趣味や自由研究の延長で紫外線やブルーライトの観測を本格的に行いたい方には魅力的な選択肢です。市販の紫外線対策アイテムが本当に効果を発揮しているかを自分の目で確かめられるので、単なる「観測」以上の満足感があります。
もちろん、専門家向け仕様のため操作や付属ソフトに少しクセはありますが、それも含めて“趣味として楽しむ醍醐味”と言えるでしょう。
この記事を参考に、紫外線観測やUV/HEV対策アイテム選びの一助としていただければ幸いです。今後は、実際に測定したデータや、各種アイテムの性能比較も随時シェアしていく予定です。