目を守る新常識! 眼病予防には、UVだけでなくHEVへの対策も欠かせません!

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コラム・読み物系

眼病検診に行ってきました

 先日、眼科で定期検診を受けてきました。幸い結果はおおむね正常で、白内障・黄斑変性症・緑内障などの心配は現時点ではなさそうでした。

 ただし、水晶体(すいしょうたい)の濁りは「年相応」とのこと。眼圧も正常範囲内ではあるものの、上限に近い数値だったため、注意が必要といわれました。そのため、半年から1年に一度の定期検診を継続するよう勧められています。

 白内障そのものは必ずしも失明には直結しませんが、進行すると緑内障を併発し、最悪の場合は失明につながるリスクもあるそうです。失明の怖さを考えれば、医師の指示を守って検診を続けるのは必須だと実感しました。

 同時に、眼にダメージを与え、眼病の原因となる「紫外線」と「HEV(高エネルギー可視光線)」への対策も、これまで以上に意識すべきだと考えるようになりました。


HEV(高エネルギー可視光線)とは? 紫外線と並ぶ“目のリスク要因”

HEVの基本と波長範囲

 HEV(High Energy Visible light / 高エネルギー可視光線)は、380〜530 nmの波長に位置する、青紫色〜青緑色の光を指します。太陽光はもちろん、LED照明、スマートフォンやPC、タブレットなどのデジタルデバイスからも放出されます。

 特に短波長側の 400〜420 nm付近のブルーライトはエネルギーが強く、網膜に負担を与えることが懸念されています。

ブルーライト全てではなく、危険性が高いのは特定の波長

 HEVの中でも、特に 411 nm付近の光が黄斑部の網膜細胞に強いストレスを与えると、ドイツの眼科研究者 Dr. Richard H.W. Funk らの研究で示唆されています。これは「ブルーライト(400 nmから450 nm)はすべて有害」という単純な話ではなく、波長によってリスクの度合いが異なることを示す重要な知見です。

参考: Knels, L., Valtink, M., Roehiecke, C., Lupp, A., Vega, J. d. l., Mehner, M., & Funk, R. H. W. (2011). Blue light stress in retinal neuronal (R28) cells is dependent on wavelength range and irradiance. European Journal of Neuroscience, 34(4), 548–558


紫外線との違い

  • 紫外線(UV): 100〜400 nm、目に見えない光。角膜や水晶体にダメージを与え、白内障や翼状片の原因になる。
  • HEV: 380〜530 nm、目に見える光。網膜まで届き、酸化ストレスを引き起こし、加齢黄斑変性症のリスク因子とされる。

※380〜400 nmの光は、紫外線とHEVの“境界領域”にあたり、どちらの影響も受けやすい点に注意が必要です。


なぜHEVが注目されるのか

 現代社会ではLEDや液晶ディスプレイが身近になり、日常的にHEVを浴びる機会が増えました。

  • 室内要因: PC、スマホ、LED照明などからのブルーライト
  • 屋外要因: 太陽光に含まれる強いHEV
  • 医学的背景: 日本では加齢黄斑変性症の患者数が9年間でおよそ2倍に増加

 こうした要因から「紫外線対策と同じくらいHEV対策も必要」との認識が広まっています。

「医学的背景: 日本では加齢黄斑変性症の患者数が9年間でおよそ2倍に増加」の補足

 日本における加齢黄斑変性症の患者数は、近年急速に増加しています。難病情報センターの報告(平成23年度)によると、全国の推定患者数は約69万人とされ、わずか9年間でおよそ2倍に増加したと推定されています[難病情報センター, 2011]。

 このデータは、人口の高齢化だけでなく、生活習慣や光環境の変化(LED照明やデジタルデバイスの普及)も背景にあると考えられており、HEV(高エネルギー可視光線)への対策が改めて注目される理由の一つとなっています。

参考:難病情報センター『加齢黄斑変性(平成23年度)』



HEVと眼病の関係

  • 加齢黄斑変性症(AMD): 網膜の中心部にある黄斑が傷つき、視力が低下する疾患。HEVが網膜に酸化的ダメージを与えることが一因とされる。
  • 白内障: 本来は紫外線による水晶体の障害が主因とされるが、HEVも関与している可能性が指摘されている。

 いずれも進行すると日常生活に大きな支障をきたすため、早めの対策が重要です。


まとめ:紫外線と並ぶ新しいリスク「HEV」

 HEVは「目に見える有害光」であり、紫外線と並ぶリスク要因です。紫外線カットが常識化した今、次に注目すべきは「ブルーライト・HEV対策」といえます。


実体験談:UVカット眼鏡だけでは不十分だった

 私は乱視が強いため、昔から眼鏡を常用しています。レンズは当然UVカット仕様。外出時も運転時もPC作業時も、ずっと眼鏡をかけており、「有害光線から目を守れている」と長年思い込んでいました。

 しかし実際には、一般的なUVカット眼鏡が遮断するのは多くの場合380 nmまで。UV400と表示があるものでも400 nmまでであり、肝心のHEVはカットされていません。調べてみると、私の眼鏡も400 nmまでしか防げず、400〜420 nmのHEVはほとんど素通し状態でした。

 さらに調べるうちに「Coroneo(コロネオ)現象」というリスクも知りました。これは、正面からの紫外線はレンズで防げても、耳側から入った光が角膜で屈折し、鼻側の結膜に集中して強いダメージを与えてしまう現象です。これを知ったときは、二度目の衝撃を受けました。

 結論として、眼病予防には 420 nmまでカットできるUV420レンズを選び、さらに側面からの光も防げるゴーグル型の保護眼鏡を併用するのが望ましい、とようやく学びました。

 現在は、外出時には普段の眼鏡の上から UV420対応のオーバーグラスを装着し、側面までしっかりカバーするようにしています。

補足:Coroneo(コロネオ)現象とは?

 眼の側面から入射する光が、角膜などの屈折・散乱を経て反対側の眼縁(特に鼻側のリムバス部)に集中する現象を「コロネオ現象(peripheral light focusing)」と呼びます。

 この現象を提唱した Minas T. Coroneo(ミナス・T・コロネオ)氏 は、オーストラリアの眼科医であり、ニューサウスウェールズ大学の眼科学教授です。
 角膜・水晶体と紫外線曝露の関係について長年研究を行い、特に紫外線が翼状片や白内障などの発症に関与する仕組みを説明する中で「コロネオ現象」を報告しました。

 さらに近年では、結膜側の紫外線自動蛍光(CUVAF: Conjunctival Ultraviolet Autofluorescence)が鼻側に強く現れるという研究もあり、この現象が実際の紫外線分布や眼疾患リスクに影響を与えている可能性が示唆されています。

参考:

  • “Pterygium as an early indicator of ultraviolet insolation” — MT Coroneo, 1993
    • この論文で Coroneo は、角膜前面を通る散乱光が線維縁(limbus)に集光される現象、すなわちコロネオ現象(peripheral light focusing)について初めて提唱しています。
  • “Ultraviolet radiation and the anterior eye” — Minas Coroneo, 2011
    • 眼の前部(角膜・結膜・水晶体)における紫外線の作用と、コロネオ現象(前部光焦点現象)についての総説論文。コロネオ効果のメカニズムや、日射と眼疾患との関連が詳述されています。

最後に

 紫外線対策はもう当たり前。これからは、目の奥に届く「HEV対策」が新しい常識になりそうです。年齢に関わらず、日常生活のなかで光から目を守る工夫を少しずつ取り入れていきましょう。


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