ファーファ「UVカット洗剤」の紫外線吸収性能を調べる
実験方法
紫外線吸収剤を配合することで、洗うだけで衣類にUVカット効果を付加できるとされるファーファの「UVカット洗剤」。
これが実際にどの程度紫外線対策になるのかを、分光器HPCS330UVを使って実験しました。
手順
- 綿100%の布(廃棄予定の黒いTシャツ)の端切れを用意する。
- 水20 ccにUVカット洗剤を微量入れ、洗剤水を作る。
- 布をその洗剤水に一晩漬け置きし、軽く濯いで乾燥させる。
- 分光器の受光部に「未処理の布」「UVカット洗剤で洗った布」を被せ、それぞれ直射日光を当てて透過光のスペクトル分布を測定する。
- 「直射日光」「布のみ」「UVカット洗剤で洗った布」の3種類の結果を比較する。

予想
一般的な紫外線A波(UVA)用の紫外線吸収剤は、355〜365 nm付近に吸収ピークを持つとされています。そのため、380 nm以上の長波長側の紫外線は十分には吸収できないのではないかと予想しました。
また、皮膚への浸透性が低い短波長の紫外線B波(UVB)については、UVカット洗剤の有無にかかわらず、布地そのものでもある程度吸収されるはずです。もし紫外線B波用の吸収剤も配合されているとすれば、305〜315 nm付近に吸収ピークが出現する可能性があります。
実験状況
測定日:2025年9月下旬の昼ごろ
天候:薄曇り(紫外線量は少なめと推測)
測定結果
直射日光

薄曇りのため予想通り紫外線量は少なめでした。とはいえ、300 nm付近からのUVBも確認でき、短波長側の紫外線がしっかり降り注いでいることが分かります。
短波長紫外線はエネルギーが高く、生体への影響も大きいため注意が必要です。
布切れで受光部を覆った状態

黒い布で分光器の受光部を覆った場合でも、残念ながらUVカット効果はそれほど高くありませんでした。UVBも透過しています。
紫外線強度自体は直射日光よりも低下していましたが、カットしているというより、布の繊維表面で散乱している印象です。そのため、スペクトル分布図には散乱由来と思われるノイズ(ギザギザ)が目立ちました。
UVカット洗剤で洗った布

UVカット洗剤で一晩つけ置き洗いした布は、300〜370 nmの紫外線を一定程度吸収していました。
ファーファの公式説明では「1回の洗濯で衣類に92%の紫外線カット効果を付与」とされていますが、今回の測定ではそこまで高い効果は確認できませんでした。
これは、おそらく「糸1本1本には吸収剤が付与され紫外線を吸収しているものの、生地の織り目の隙間から透過してくる紫外線の量が意外に多い」ためと考えられます。
スペクトル分布図を重ねた結果

3種類の測定結果を重ね合わせると、紫外線透過の強度が「直射日光 > 布 > UVカット洗剤で洗った布」という順序で下がっていることが明確に分かります。この結果から、UVカット洗剤を使った洗濯は、紫外線対策に一定の有効性を持つことが確認できました。
結論
UVカット洗剤で洗うと、確かに衣類に紫外線カット効果を付与できます。
ただし、当初の予想通り 370 nm以上の長波長側UVA については効果がほとんど見られませんでした。さらに、生地の隙間を通り抜ける紫外線量も無視できないため、薄手の衣類の場合はUVカット洗剤を使っても十分ではなく、重ね着が必要になります。
したがって、UVカット洗剤を使った衣類だけに頼らず、日傘・帽子・サングラスなどとの併用が重要です。
ファーファのUVカット洗剤は、特にエネルギーが高く危険度の高い短波長紫外線に対して有効であり、紫外線対策を強化する一つの手段として選択する価値は十分にあります。ただし「これだけで完璧」と考えるのは危険です。
また、紫外線吸収剤には必ず効果持続時間があります。盛夏の炎天下に干すと、乾燥中に吸収剤そのものが紫外線により分解・劣化し、UVカット効果が低下していく可能性が高い点にも注意が必要です。
まとめ
今回の検証で分かったのは、ファーファのUVカット洗剤は確かに衣類に紫外線カット効果を付与できるということです。特に、肌へのダメージが大きい短波長側の紫外線をある程度抑えられるのは安心材料になります。
一方で、370 nm以上の長波長側UVAまでは吸収しきれず、生地の隙間からの透過も少なくありませんでした。つまり、UVカット洗剤を使っただけでは「万全」にはならず、日傘や帽子、サングラスといった他の紫外線対策と組み合わせることが不可欠です。
それでも、普段の洗濯に取り入れるだけで衣類の紫外線防御力を底上げできるのは、手軽かつ有用な工夫だと思います。特に夏場や屋外活動が多い方にとっては、「ちょっとした追加対策」として取り入れる価値があるでしょう。


